今や、失った歯を補う治療法としてすぐに名前が挙がるインプラントですが、実は、誰でも受けられる治療ではありません。実際に歯医者さんで、「インプラントにすべきでない」「今のままではインプラントはできない」などと言われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は、インプラント治療を受けられないケースについて解説していきましょう。
インプラントができないのはどんな人?~インプラントの禁忌症~
インプラントの禁忌症(きんきしょう)とは、インプラント治療に適さない症例・状態のことで、「絶対的禁忌症」と「相対的禁忌症」があります。
絶対的禁忌症
改善が望めない疾患があり、インプラント治療を「避けるべき」ケース・症状のこと。たとえば、白血病や血友病などの血液疾患がある方、免疫不全の方、放射線治療を受けている方などはインプラントの絶対的禁忌症に該当します。
相対的禁忌症
インプラント治療をするには「リスクが高い」ケース・症状のこと。症状が改善したり、障壁がなくなったりすればインプラント治療は可能になります。以下は、主なインプラントの相対的禁忌症です。
・顎の骨が少ない
インプラントを埋入するのに十分な量の顎の骨がない場合は、治療が難しくなります。
・重度の糖尿病
重度の糖尿病を患っている方は傷口の治りが悪く、感染症を招きやすくなります。また、インプラントを埋入したとしても骨とうまく結合せず、失敗に終わる可能性が高くなります。
・重度の歯周病
重度の歯周病を患っている方はインプラントを埋入した後、インプラント周囲炎を引き起こすリスクが非常に高くなります。
>> 関連コラム 「インプラント治療に適さないのはこんな人!」
・歯ぎしり・食いしばり
インプラントはクッションの働きをする歯根膜がないため、歯ぎしり・食いしばりのクセがある方はインプラントに過剰な負担がかかってしまうリスクがあります。
・顎の骨の成長が終わっていない
顎の骨が成長過程にある方は、インプラントを入れても顎の成長とともにズレてしまう可能性があります。一般的に顎の成長が終わるのは20歳前後とされているため、それより若い方のインプラント治療にはリスクが伴います。
・タバコを吸う
喫煙者は「傷口が治りにくい」「歯周病になりやすい」など、インプラントの障壁になる要素が多く、実際に非喫煙者に比べてインプラントのトラブルが起きる確率が高いことが実証されています。インプラント治療をきっかけに禁煙することが望ましいとされているのはこのためです。
上記のほか、「心筋梗塞・脳梗塞を患ってから半年以内」「高血圧」「骨粗しょう症の薬を服用している」「妊娠中・授乳中」といったケースも相対的禁忌症になるため、その状態でのインプラント治療はおすすめできません。
新宿スワン歯科・矯正歯科 院長より
インプラント治療が適さないケースのなかでも多いのは、「顎の骨が少ない」ケースです。もともと骨量が少ない方もいますし、加齢とともに顎の骨が薄くなっていく方もいます。また、歯周病で顎の骨が溶かされてしまう方もいます。ただし、顎の骨が少ないと100%インプラント治療ができないわけではありません。「造骨法」と呼ばれる手術で骨量を増やすことで、インプラント治療が可能になるケースはあります。造骨法に関しては、回をあらためてご説明しましょう。
次回の歯科コラムは、6月28日(火)の公開を予定しております。ぜひ、お楽しみに。